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エスティーメモランダム

―学園サバイバー―

4
+++

 灰色の道が長く続く。
 その道を果てまで渡りきってしまったら、後の展開は決まっている。
 帰宅、夕飯、予習、明日の準備、お風呂、ネット……。
 そして就寝。その後、朝が来てしまう。魔の巣窟である学校、へ行かなきゃいけなくなる。
 帰ったら時間が進んでしまう。明日へのカウントダウンが始まってしまう。

 この道を進みたくない。
 見慣れた周囲の風景すら見えていない。
 このまま帰りたくない。
 本音は私の心の中に留まって消え、言葉にはならない。
 時間が進んでほしくない。
 紺色の群れの中で私はまた笑顔を作る。
 明日なんて来てほしくない。

 絶望するとわかりきっている、明日なんて。


 目が覚め、普通の、平和な日が訪れていることに安堵する。
 冷や汗を拭い、目覚ましを止め、身を起こす。

+++

 昼休み、朱音はまた保健室にいた。
 四時間目後半、朱音は腹痛を訴えて保健室に行った。
 私は教室で、一人お弁当をつついていた。今日も玉子焼きは美味しい。中学生の時、給食を美味しいと思わなかった。本当に美味しくなかったのか、私の心情の問題なのかは、未だにわからない。
 前の席でわいわいと話していたクラスメイトが、私の方に振り返る。名前は白乃、だったよな。
「ねぇ、朱音ちゃん大丈夫なの?」
「え、寝たらよくなると思うよ?」
 朱音はよく腹痛を訴えるけど、いつも休めばよくなる。
「いや、そうじゃなくてさ……」
 白乃の顔が曇る。どうやら腹痛の話ではないようだ。
 首を傾ける私に、白乃は去年の朱音の話を始めた。

「私、朱音ちゃんと去年も同じクラスだったの。朱音ちゃんさ、城戸さん……城戸翠ちゃんと仲良かったのよ。去年、一昨年と。でもね、翠ちゃん凄い冷たくしてるように見えたのね、朱音ちゃんに。朱音ちゃんはそれでも必死に翠ちゃんに着いていってて。結局一緒にいるの。段々朱音ちゃん、今みたいな感じになってきたの。よく泣いて、よく体調崩して。だから気になって……」
「朱音の調子があぁなのは、その翠ちゃんのせいなんじゃないかと?」
 まずい。また言葉がちょっとキツかったかも、と思いながらも私は問う。どうしたら柔らかい話し方ができるのだろう。
「うん……。だって何か可哀相に見えちゃって。朱音ちゃんはあんなに翠ちゃん好きなのに、冷たくされてて」
 私は考える。朱音の話だと、翠という人は朱音の話を聞いてくれるいい人のようだったのに。
 言葉を途切れさせた私に、今度は先程まで白乃と一緒に話してた友達が話し始めた。
「二年生の時さ、朱音ちゃん単位危なかったらしいじゃないですか。保健室行きながら授業出席して、補習してもらって、単位稼いで。私はそう聞いた」
 今度は再び白乃が話す。
「しかも朱音ちゃんいつも泣いてて可哀相だったよ。翠ちゃんがいない時は、俯いて黙りこくってるし」

 そこでタイムアウトだった。チャイムが鳴った。朱音も教室に戻ってきた。
 これは朱音にもっと話を聞かなければいけないな。と私は思案に暮れた。

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