行き詰った二人は、それ以上模索するのをやめた。
「私……みんなが無事か、見てくるね!」
と言って、リシュは部屋を出て行った。
部屋を出て、廊下を歩く。
歩いていくと、年も様々な子供達とすれ違う。
「あ! リシュ姉!!」
と皆再会を喜んでいた。
子供達は、みんな笑顔だった。
数分後。リシュは、部屋に戻ってきた。
シャイレは、二つあるベッドの手前のベッドにもたれかかっていた。
着ていたベージュのコートを脱いで、羽織っていた。
目を閉じて、俯いていた。
リシュが部屋に入るとすぐに顔を上げた。
「あ……遅くなった!ごめん!」
シャイレは首を横に振った。
「シャイレは……ここにいて大丈夫だって!!」
シャイレがリシュを呆然と見つめる。
リシュにしか悟れないほど微かだが、驚いていた。
また、深々と頭を下げた。
「後ね。夕ご飯です!」
シャイレはリシュを見てまた呆然とする。
『い、いい……のか?』
「大丈夫です。誰でも大歓迎なのです」
リシュはシャイレに微笑みかけた。
シャイレは、相変わらず無表情のままだった。
必死で笑顔を作ろうとしていることに、リシュは気づいていた。
突然現れたシャイレに子供達は興味津々だった。
軽く俯いたまま一言も発しないので、なおのこと興味津々だった。
銀色の髪、青い瞳。凄く整った精悍な顔立ち。
みんな凄くキラキラした目でシャイレを見ていた。
シャイレの方は、あまりにも視線を注がれるので戸惑っていた。
好意的な眼差しを向けられたことはなかったようだ。(本人の記憶にないだけかもしれないが)
戸惑ったシャイレはただ黙々と目の前の夕食を口に運んでいた。
リシュはそんなシャイレを暖かい目で見守っていた。
シャイレはうろたえたのか、心の中でさえ一言も発さなかった。
なんとなく何を思っているかはわかったが、はっきりと言葉ではリシュに伝わらなかった。
リシュは、まだ用があったらしく、シャイレは一人で部屋に戻ろうとした。
シャイレに興味津々だった子供の何人かとすれ違った。
シャイレは何を尋ねられても黙っているが、言われたことだけはじっと聞いていた。
その間ずっと無表情だった。
何も感じていないかのようだった。真っ白な心のままシャイレはいた。
リシュ以外には感情を抱くことを許さないのだろうか?
ただ、癖として、習慣として感情を抱かないのだろうか?
きっと、リシュ以外に気持ちが伝わらないからではない。
リシュに対する好意とかそういうものではない。
本人もわからない何かがあったのだろう。
また部屋に一人きりになってしまったシャイレ。
さっきと同じように、ベッドにもたれかかってコートに包まって、目を閉じ、俯いた。