桜と君の景色

 うららかな春の日差しが注ぐある日のこと。僕はのんちゃんとお花見に出かけました。

 のんちゃんのおうちから近くの土手。その土手沿いにはたくさんの桜の木が並んでいる。週末にはたくさんの人が押し寄せるけど、平日の今日は人もまばらだ。
 最寄りの駅で待ち合わせして、そこから二人で歩いてきた。のんちゃんは桜色のワンピースを着ていて、その上に茶色いカーディガンを羽織っている。髪にお花の飾りをつけているのも可愛い。
 土手を少しだけ二人で歩いた。途中、大量の兎集団とすれ違った。兎の散歩だ。飼い主が知った顔だったので、僕は気付かれないよう必死になった。のんちゃんは兎さん可愛い! とはしゃいでいた。
 桜の木の下にレジャーシートを敷く。目を上げれば一面の桜。どうして桜はこんなにも華やかなのだろう。見ているだけで心が浮き立つ。新生活のそわそわ。のどかな暖かさ。そんな春の気持ちの象徴みたいだ。
 のんちゃんは提げていたショルダーバッグから、大きめのお弁当箱を取り出した。そう。今日はのんちゃんがお弁当を作ってきてくれたのだ! 普段はなかなか元気が出ないらしくて、料理はあまりしていないという。でも今日は頑張ってくれたのだ。
「ゆーちゃんとお花見ながらお弁当食べたいのよ」
 とのこと。僕の幸せは桜より満開だ。
 お弁当の中身は、おにぎりと玉子焼き、ウィンナーだった。おにぎりの具材はツナマヨとおかか。玉子焼きは甘い味。僕ものんちゃんも甘い方が好きなのだ。僕の分のおにぎりは大きくて、のんちゃんの分のおにぎりは小さい。それはこうして桜の下に並ぶ僕達にも似ていて、微笑ましい。
 お母さんと作ったというお弁当はとても美味しい。手作りお弁当は自分の母親のしか食べたことなかったけど、同じくらい美味しい。そこに綺麗な桜とのんちゃんがいるのだから、美味しさは倍増である。
 のんちゃんもちまちまと美味しそうに食べている。時折こちらに笑顔を向ける。僕はにやけすぎないように気を付けながら笑顔を返す。
 それから二人でまったりとお話する。時間は緩やかに流れている。
 いつものお花見は大勢で賑やかに騒いでいる。それも楽しいけど、こうしてのんちゃんとのんびり桜を見ているのも楽しい。
「のんちゃん、桜のお話書きたくなりました。春のお話です」
 絵本の物語を想像したりもした。僕も桜とのんちゃんの絵を描きたくなった。
 のんちゃんのいる風景はいつも幸せに満ちている。
 その風景に、今日は桜を添える。


おまけ

「酒! もっと酒持ってこーい!」
「…………」
「ハル君一曲! 一曲歌うんだ!」
「…………」
「ハル君もっと食いなさい」
「…………」
「私大学で見たんだぞ。ハル、友達といる時はテンション高いよね!」
「何故私達といる時は押し黙る。置物か。君は置物なのかー!!」
「……酔うのは帰れる程度に抑えて下さいね」
「暗いぞ! もっとテンションアップ! アップだぁ!」
「…………」

おまけ2

「お、桜シフォンケーキだ!」
「翼! 誕生日おめでとう!!」


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