飴と猫とうしさんと

 2009年、一月一日。
 牛さんがやってきた。
「こんにちは」
「こんにちは」
 猫人形達は、お正月であろうと、住宅街に牛が現れようと、いつものように驚かない。
「えーっとぉ、牛乳のぉ、営業にやってきましたぁ」
 猫耳の生えた人形二匹が出迎えても、喋っても、牛さんの方も驚かない。
 ショルダーバッグに帽子を被った牛さんだ。
「牛」
「乳」
「そうですぅー。牛乳ですぅー」
「ぎゅう」
「にゅう」
「うし」
「ちち」
「そうなんですぅー。牛からもらっておりますぅー」
 猫人形と牛さんは気が合うようだ。
 ゆっくりとして、和やかな時間が流れる。
「牛乳、いかがですかぁー。今年はお正月特別営業なんですぅ」
 牛さんは笑顔のまま、牛乳ビンを何本か並べる。
 普通の牛乳、いちご牛乳、コーヒー牛乳だ。
 猫人形は、それをまじまじと眺める。
「美味しそうな」
「牛乳」
「ミルクの飴とか」
「ありますか?」
 牛さんはこくこくと首を縦に振って、頷いた。
「ウチの牛乳からできたぁ、甘くてなめらかなミルクの飴ですぅ」
 そう言って、カバンから飴を取り出した。
 白い宝石のような、まんまるい牛乳の飴。それが個別包装されて、ビンに入っている。
「わぁ」
「美味しそう」
「猫人形」
「嬉しい」
 猫人形は、ビンの周りで踊り始めた。
 牛さんはそれを優しい笑顔で頷きながら見ていた。
「ミルクの飴」
「また届けてくれますか?」
 猫人形は動きを止めて、牛さんをじっと見つめた。
「もちろんですぅ!」
 それから、牛さんと猫人形は、ビンの周りを踊った。
 猫人形に新しいお友達ができたのだ。

「はっぴーにゅー」
「いやー」

---------------------------------------------------------------------
2009年お正月小説。遅れましたが。
今年も宜しくお願いいたします!

2009.1.16.Kyo

読んでいただきありがとうございました。
 

Copyright(c) 2008 Kyo Fujioka all rights reserved.