飴と猫とめりーくりすます

 いつもの子供部屋もクリスマス仕様。
 小さなツリーが飾ってあったり、ベッド脇には小さな靴下が二つぶらさがっている。

 BGMとして、アカペラのクリスマスソングが流れている。
 幾重にも重なるハーモニーが部屋をクリスマス色に染める。
 猫人形二人(二匹?)はその綺麗な響きに耳を傾けている。
 飼い主は今日も電話中。
「え、フゥクリスマス空いてるの? ウチ来たいって?」
 フゥ、という単語に猫人形二人は体を震わせる。
 そして、ウチ来たいって? の台詞でBGMを変えた。

 BGMは「Last Christmas」

「あー、何か猫人形達が来るなって」
 猫人形の、BGMによる無言の抗議である。
「何故わかるって? フゥとは違うからな。フゥとは」
 飼い主はまた電話しながら部屋の外へと出て行った。
 猫人形は視線を交わす。
「危なかった」
「危なかった」
 BGMも「SANT CLAUS IS COMIN TO TOWN」に変えた。
 曲と猫人形の心境の関係は、飼い主と猫人形にしか恐らくわからない。
「くりすます」
「すます」
「くりすもす」
「もす」
 猫人形は、クリスマスの計画を立て始めた。
「招待状来てたね」
「読もう」
 猫人形はベッドの下から招待状を取り出した。

『☆Merry Xmas!☆
このたび、広瀬野鳥の会でクリスマスパーティーを催すこととなりました。
貴方達のご来訪を、心よりお待ちしています。

広瀬野鳥の会』

「野鳥?」
「鳥?」
「差出人は」
「ペンギンクリエイターズ」
「鳥っちゃ鳥」
「鳥っちゃ鳥」
 猫人形は、クリスマスパーティーに行くことにした。


「プレゼント」
「買わなきゃ」
 翌日タヌキチに乗って、出発。タヌキチは、タヌキではなくポメラニアンである。
 近所にあるチカーバックスコーヒー(近場にある喫茶店)へやってきた。
(因みに、店員さんがくたばっているクターバックスコーヒーもある)
「やっぱり届かないね」
「やっぱりメニュー見えないね」
 猫人形は、チカバ(略称)でのお買い物を諦めることにした。

「プレゼントは」
「やっぱり飴だね」
 猫人形はパーティー会場へと向かった。
 会場は以前も訪れたビルの四階。

 広い部屋は、色鮮やかにクリスマスの飾りつけがしてあった。
 リースやツリー。照明を受けて、キラキラと輝いている。

 色とりどりのペンギンさん達は、既に料理を囲んで待っていた。
 ペンギンさんだけでなく、ハトポッポーズとニワトリーズとチュンチュンファクトリーの面々がいた。
 みんな楽しそうにはしゃいでいる。
 猫人形は黒ペンギンに出迎えてもらった。
 たくさん並んだ料理を見た猫人形は口をあんぐりと開けた。
「鳥なのに」
「鶏料理」
「ニワトリもいるのに」
「鶏料理」
 そこら辺のことは敢えてはっきりさせないまま、パーティは始まった。
 談笑に歌に鶏料理にダンスに音楽に鶏料理。
 賑やかで華やかでとっても楽しげ。
 猫人形も胸いっぱい楽しんだ。

「チキン」
「美味しかったね」
「ニワトリーズが食べてるところは」
「何故か見かけなかったね」
「さすがに」
「さすがにね」
 タヌキチの上で揺られながら猫人形は話していた。
 家に着く頃には、うとうと眠たくなっていた。


 ぬいぐるみが乗っている小さなテーブルの下に、猫人形のベッドはある。
 テーブルの下にもぐりこんで猫人形はベッドに入る。
「おやすみ」
「おやすみ」
 上にいるぬいぐるみ達と、猫人形相方お互いに挨拶をする。
 そして猫人形は眠りについた。


翌日、靴下に飴が入っていた。
「サンタさんからの」
「プレゼント」
猫人形はクリスマスも楽しかった。
世界中あちこちの楽しいクリスマスを思って、猫人形は嬉しくなって踊り始めた。

「めりー」
「くりすます!」

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2008年クリスマス小説。
オチなしでネタだけに突っ走るのもいいと空と粉雪では考えております。

では、楽しいクリスマスになりますように!

2008.12.24.Kyo

読んでいただきありがとうございました。
 

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